SDGsと防災
2030年までに全世界で目標達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)では、
“誰一人取り残さない(Leave no one behind)”をスローガンに進められています。
今後の様々な社会情勢の変化があっても、持続的に発展するためには、日本においては災害を念頭においた社会作りが欠かせない。
そこで、災害と隣り合わせの日本で、防災がSDGsとどのように関わっているのかということを取り上げてみます。
世界から見た日本の災害
日本は災害大国です。
国土面積で言うと世界全体でわずか0.25%しかない日本が、どれほど災害とSDGs・持続可能な発展とを切り離すことができないかということを内閣府の防災白書がまとめています。
以下をご覧ください。
- マグニチュード6.0以上の地震の18.5%が日本で発生している
- 世界の活火山の7.1%が日本にある
- 世界の災害における死者数の1.5%が日本
- 災害における被害額の17.5%が日本
防災白書で見る災害発生時の対応及びそれへの備え
内閣府の「防災情報ページ」というのがありまして、災害発生時の国の対応と備えについて、
詳しく紹介してあります。(一部抜粋)
(1)緊急事態における初動対応
応急対策を講ずる上で最も重要となる情報収集・連絡体制の確立に関しては、官邸の内閣情報集約センターが窓口となり、24時間体制で情報の収集・伝達等の対応に当たることとし、関係省庁における情報の共有化を図っている。
大規模災害や社会的影響の大きい災害が発生した場合、緊急参集チームが官邸危機管理センターに緊急参集し、政府としての初動措置に関する情報の集約等を行うこととしている。
また、内閣府においては、被害規模の早期把握に関して、地震規模により異なるものの地震発生後概ね10分で被害を推計する「地震防災情報システム(DIS)」を整備し稼働させている。一方、被害規模の早期把握のため、各省庁はそれぞれの立場において現地の関係者からの情報を集約するほか、警察庁、消防庁、国土交通省、海上保安庁、防衛省においては、航空機(ヘリコプター等)、船舶や各種通信手段の活用等により情報収集を行うこととしている。
発生した災害の規模に応じて、関係省庁間での情報共有、対策の調整を行うために、関係省庁災害対策会議を開催するほか、大規模な被害が生じている場合には、内閣府特命担当大臣(防災)を本部長とする非常災害対策本部を、著しく異常かつ激甚な被害が発生していると認められる場合には、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部を設置することができる。なお、東日本大震災を踏まえて、効率的な応急対策を実施するため、政府は情報の収集・分析や被災者の生活環境の改善に係る総合調整等の機能を充実させるとともに、併せて人員も増加し、緊急災害対策本部の体制を強化した。
さらに、被災地のより詳しい状況把握と的確な災害応急対策を講ずるため、状況により、内閣府特命担当大臣(防災)、内閣府副大臣、又は内閣府大臣政務官を団長とし、関係省庁の要員で構成する政府調査団を派遣することとしている。
また、観光庁においては、地震・津波等の災害時における訪日外国人旅行者への初動対応体制を構築すべく、平成25年10月、「災害時における訪日外国人旅行者への情報提供のあり方に関するWG」を設置し、宿泊事業者や地方自治体、外国人等の意見を聴きながら、宿泊施設・観光施設における訪日外国人旅行者への対応マニュアルの作成、IT(アプリ)を活用した訪日外国人旅行者への情報提供システムの整備、地方自治体が訪日外国人旅行者への対応を地域防災計画等に盛り込むための指針の作成等を実施した。
(2)避難勧告ガイドライン
内閣府では、平成17年に策定された「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」について、新たな防災情報が発表されるようになったことやこれまでの災害の教訓を踏まえて、学識経験者や地方公共団体、国の関係機関の意見を聞きながら検討を進め、改定作業を行い、全面的な見直しを完了させ、平成26年4月、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン(案)」として都道府県を通じて市町村に通知し、避難勧告等の判断基準等について見直し又は設定を行うよう依頼した。
(3)救急・救助体制
地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害の場合、警察庁、消防庁、海上保安庁及び自衛隊の実動部隊を広域的に派遣し、救急・救助活動を行う。
警察庁においては、東日本大震災を踏まえ、大規模災害発生時に被災地等において活動する部隊を拡充し、即応部隊と一般部隊からなる警察災害派遣隊(即応部隊規模:約1万人(広域緊急援助隊警備部隊約2,600人、同交通部隊約1,500人、同刑事部隊約1,500人、広域警察航空隊約500人、機動警察通信隊約1,200人、緊急災害警備隊約3,000人))を編成した。
消防庁においては、大規模な災害の際に全国の消防機関が相互に出動し効果的な消防応援活動を行うための部隊である緊急消防援助隊(平成26年4月1日現在の登録部隊数4,694隊(消火小隊1,649隊、救助小隊423隊、救急小隊1,057隊他))を的確かつ迅速に出動可能としている。また、被災地の消防の応援を行う体制を構築するため、緊急消防援助隊の編成及び資機材の充実強化を図っている。
また、海上保安庁においては、海上における災害に係る救助・救急活動を行うこととしており、さらに可能な場合は、必要に応じ、被災地方公共団体の活動を支援することとしている。
さらに、防衛省・自衛隊においては、都道府県知事等の要請に基づく災害派遣により、救出・救助等の災害応急対策活動を行うこととしている。
(4) 災害に強い石油・LPガスサプライチェーンの構築に向けた取組
経済産業省においては、東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模災害が発生した場合においても、石油・LPガスの供給を維持・早期回復させることを目的とした対策に取り組んだ。
ハード面の強化に関する取組としては、製油所・サービスステーション(SS)をはじめとする石油供給拠点の強化に対する支援や国家石油製品備蓄の増強を行った。
具体的には、製油所においては、設備の耐震強化やタンクローリー出荷設備、桟橋などの入出荷設備の増強、SSにおいては、地下タンクの入換え・大型化や自家発電機の設置等を支援するとともに、平成24年度に改正した「石油備蓄法」に基づき指定した中核SSにおける製品在庫の確保について、国と自治体の連携による支援を措置した。LPガスにおいては、輸入基地や二次基地への移動式電源車の配備、災害時に地域のLPガス供給を図るための中核充てん所の整備や、避難所となりうる需要家への燃料備蓄の支援等を実施した。国家石油製品備蓄の増強については、国内消費量の約4日分の石油製品(ガソリン、灯油、軽油、A重油)の備蓄を平成25年度に完了させた。
ソフト面の取組としては、「石油備蓄法」に基づき石油会社が策定した「災害時石油供給連携計画」に関する訓練を、平成25年6月に関係省庁や石油業界、地方自治体と共同で実施した。
平成26年度以降も引き続き、石油・LPガスのサプライチェーンの災害対応能力強化や、災害時石油供給連携計画に基づく訓練に取り組むとともに災害時の協力体制等について、石油業界・関係省庁と検討していくこととしている。
(5)情報収集・伝達体制
大規模な災害が発生した際、政府として迅速な災害応急対策がとれるよう、気象庁からの地震・津波情報、関係省庁等からのヘリコプターにより撮影された被災画像・映像、指定公共機関、地方公共団体、その他防災関係機関からの被害情報等、災害に関する情報を総合的に収集し被害規模を把握するとともに、これらの情報を直ちに総理大臣官邸、指定行政機関等へ伝達するためのシステムが構築されている。
まず、地震の情報については、気象庁は、全国約660地点に震度計と約300地点に地震計を設置してオンラインで地震の観測データを収集し、その他の機関の観測データと合わせ地震活動等総合監視システム(EPOS)により処理・解析して、緊急地震速報や地震情報を発表している。
また、消防庁は、震度情報ネットワークシステム整備事業等により全国の都道府県、市町村の約2,900地点に設置した震度計等から観測される震度情報を即時に情報収集し、広域応援体制確立の迅速化等に利用している。
一方、独立行政法人防災科学技術研究所は、全国約1,900箇所に強震計、高感度地震計及び広帯域地震計を設置し、地震情報を通信ネットワークで収集・配信するための設備を整備しており、地震発生時には気象庁が行う緊急地震速報や震度情報の発表に活かされる等、初動対応等に活用されている。
次に、津波の情報については、気象庁は、全国の沿岸約80箇所に津波観測施設を設置しているほか、関係機関(国土交通省、海上保安庁、国土地理院、地方公共団体等)が設置している観測施設からのデータも活用し、全国の沿岸約170箇所で津波の監視を行っている。また、沖合の津波監視については、国土交通省が整備したGPS波浪計や、気象庁や関係機関(海洋研究開発機構、防災科学技術研究所)が設置したケーブル式海底津波計に加え、気象庁が新たに整備した3箇所のブイ式海底津波計と合わせて約50箇所の沖合観測施設からのデータを活用している。気象庁は、地震計のデータやこれらの津波の監視に用いているデータを基にEPOSにより処理・解析して、地震により日本沿岸に津波が到達するおそれがある場合や、津波を観測した場合には、大津波警報・津波警報・津波注意報、津波予報、津波情報を発表している。
この他、防災科学技術研究所や海洋研究開発機構では、緊急地震速報や津波警報の高度化に貢献するため、海底地震・津波観測網を整備し、観測の充実を行うこととしている。
雨量・風速等気象の情報については、気象庁は、地上の気象観測を行う地域気象観測システム(AMeDAS)、降水の強さ・風の三次元分布を観測する気象ドップラーレーダー、東アジア・西太平洋域の雲の分布・高度等を広く観測する静止気象衛星等の観測データを収集し、数値解析予報システムにより解析、予測等を行っている。
気象庁で解析・処理された情報は、気象庁本庁及び大阪管区気象台に設置された気象情報伝送処理システムを介して内閣府、警察庁、消防庁、海上保安庁、防衛省等の中央府省庁と共に、国土交通省地方整備局、地方公共団体に伝達されている。このうち、気象庁の発表する気象、津波等の警報は、都道府県、市町村や関係機関を通じ、地域住民に伝達されている。予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合に発表することとして平成25年8月から運用を開始した特別警報については、市町村から住民への伝達がより確実に行われるようになっている。
また、国土交通省は、河川の水位、雨量、洪水予報、水防警報等の河川情報をリアルタイムに収集し、ウェブサイト「川の防災情報」や地上デジタル放送のデータ放送において、提供している。
なお、内閣府防災担当においては、平成26年2月の大雪対応を契機として、国民が必要とする災害情報を伝えるため、内閣府ホームページやツイッターによる情報発信に加え、新たに「内閣府防災担当フェイスブック」を開設し、道路開通などの交通情報や物資供給などの避難関連情報や社会福祉協議会等が発信する防災ボランティア情報等の発信を行うこととしている。
(6)防災情報の活用
収集・伝達された防災情報は、防災関係機関が密に連携し災害対応に取り組むため広く共有される必要がある。内閣府では、災害発生時に被災状況を早期に把握し、迅速・的確な意志決定を支援するため、防災関係機関間で防災情報を地理空間情報として共有する「総合防災情報システム」の整備を進めている。
総合防災情報システムにおいて取り扱う防災情報は大きく3つに分類される。
一つ目は、施設情報や基盤地図情報、災害リスク情報等、主に予め登録された情報である。これには、国土地理院が整備する電子国土基本図や「だいち」により撮影された平常時の衛星画像等の背景地図、病院・避難施設・学校等の施設情報や危険物施設等の重要施設のほか、防災計画等に定められている緊急輸送ルートやヘリポート、活動拠点等がある。
二つ目は、他機関から自動的に受信する観測情報である。これには、気象庁から配信される気象情報、地震・津波情報、国土交通省から配信される河川情報などがある。
三つ目は、災害に応じて収集・公表される情報を入力した防災情報等である。これには、関係省庁が取りまとめる被害報告、水道や通信等の被災状況、交通インフラの情報、被災地の衛星画像などがある。
これらの情報は地震発災直後には緊急災害対策本部設置の判断などに活用されるほか、応急・復旧期には関係機関により報告される被害報や活動状況等を地図上に重畳し、関係省庁会議等において情報共有される。
大規模災害の発生時には、行政の機能が麻痺し、被災状況が迅速に把握できない事態が想定されている。このような事態を回避するため、行政が保有する情報に加え民間事業者が保有するビッグデータの活用が期待されている。ビッグデータの活用の一環として、実際に自動車が走行した位置情報等から作成するプローブ情報の利用を検討している。プローブ情報は通行可能な道路の把握に有効であり、災害発生後の緊急車両の通行確保やインフラ・ライフラインの早期復旧において重要な情報であることから、これらの情報の収集に取り組むとともに、総合防災情報システムにも取り込み、地理空間(G空間)情報を活用して情報の共有を行えるよう、関係民間団体と協議を行っている。
SDGsの17の目標と防災の取り組みとの関連性
SDGsと防災の関連は大きく分けて2つの視点があります。
①持続可能な社会・まちづくりとして、
災害への強靭性(レジリエンス)に焦点を当てた防災
②“誰一人取り残さない”という包摂性(インクルージョン)に関連する防災
次に、この視点からいくつかSDGsについて考えていきます。
1 貧困をなくそう
貧困や障害により社会のセーフティネットから逸脱してしまい、災害や大きな社会変動により、貧困に陥ってしまうことがあります。
災害時で言うと、障害により避難が遅れて命を落としてしまうリスクや、災害そのものの被害は免れたものの、その後の避難生活が加齢や障害、慢性疾患などを考慮されていないために災害関連死を含めた深刻な影響が出るなど災害に対する脆弱性が増加します。
6 安全な水とトイレを世界中に
災害時の水の確保の重要性は誰しもが分かりますが、それと同じ重要性が災害時のトイレにはあります。 水や食料を取れば(入口)、その排泄(出口)が必要です。
出口が確保されないと、入口から入ってくるものを制限する心理が働きます。
トイレがないことで食事や水分補給を控えて脱水症状や免疫低下、エコノミークラス症候群のリスクの増大などに繋がります。
トイレの利用は一人当たり1日5回、東日本大震災では自治体による仮設トイレの設置は7割近くが4日以上要しています。
個人や家庭においては携帯トイレの人数分の数日分の備蓄などは欠かせません。自治体や企業においては多様な人を考慮した災害時トイレの確保が重要です。
東日本大震災を経験した障害者は、避難所のトイレが和式トイレであったり、手すりがなく利用できなない、車いすで入るスペースがない、トイレまでの移動の導線が確保されていない、などバリアフリー対応がなされていないために、避難所へ行くことを断念した人も多くいます。
SDGsへの防災に対する取り組みやレジリエンスのある街や組織であるためにも災害時に備えたトイレを確保するだけにとどまらず、多様な人を置き去りにしないインクルーシブな対策が不可欠です。
11 住み続けられるまちづくりを
災害のリスクを理解するためにはハザードマップなどを参考に、災害によってどのようなリスクや被害になり得るかを理解することや、高齢者や障害者など避難の際に何らかの配慮を必要とする“避難行動要支援者”も想定した防災訓練やワークショップの実施などによる防災教育の実施などがSDGsにおける防災の取り組みとしてつながります。
防災介助士の講習から災害そのもの理解だけでなく、避難行動要支援者の応対など、“知る” “守る” “助ける”をまとめて学ぶことができる実践的な外部研修を利用することで災害に強い組織体・事業継続へとつなげることもできます。
13 気候変動に具体的な対策を
日本は面積としては小さいにもかかわらず、多くの自然災害が日本で発生しています。
近年では大雨が各地で発生し、観測史上最大の降水量を記録した地域が多数あります。
この中のターゲットで「気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能」とあります。
様々な気候変動の中で、何故それが起こるのか、どのように取り組めばいいのかを考え持続可能な社会の担い手を育てる「持続可能な開発のための教育(通称ESD:Education for Sustainable Development)」という教育活動があります。
例えば子ども達へのESGにおいても、SDGsと災害、そして障害者など多様な人を置き去りにしない防災についても学ぶ必要があります。
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